1〜3月に読んだ本

読んだ順番などはばらばらに記していく。


というのも、もともと読んだ日付と書名をきちんとノートに記録していたのだが、今年に入ってからは多忙と無精によりそれをまったく怠っていたのだ。
わざわざ記録などしなくても気ままに読めばいいさと思っていたのだが、案外と不都合の生じることがここ3か月でわかってきた。


1つは、読んだ本の内容はおろか、なんの本を読んだかということ自体をすっかり忘れてしまうということだ。これは特に説明を要しない。

もう1つは、読書傾向がどんどん乱脈に流れていくということだ。ある1つの目的をもって継続的に読書を続けていくということがしにくくなる。

もちろん、純粋に気散じのために本を読んでいるだけならそれでまったく構わないのだが、今年は小説を1本完成させるという目標を達成したいので、ある程度読書のメタ認知が必要だと感じている。

 

司馬遼太郎『この国のかたち』1〜4
司馬遼太郎が小説の題材にしているのは、戦国、幕末、明治が多く、中世を描いた作品はとても少ない。『義経』は書いているがかなり尻切れトンボで終わってしまっている。が、このエッセイ集では中世のことをたくさん書いている。特に、鎌倉幕府を良い意味で「農民が樹立した政権」として非常に高く評価するくだりは面白かった。

 

◎ユヴァル・ノア・ハラリ『21Lessons』
◎スローマン、ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』
★「人類よどこへ行く」系の本。特に後者がよかった。知識や記憶というものは個人の頭の中にあるのではなく、その大半はむしろ外部記憶装置としての社会とか、他者のほうにある。社会が複雑化すればするほど、そのことを自覚する必要があるよねという話。

 

北方謙三『草莽枯れ行く』
清水次郎長と、相楽総三というダブル主人公。特に冒頭の出会いのシーンが最高。「俺は丁目にしか賭けない」

 

トーベ・ヤンソンムーミン谷の彗星』『たのしいムーミン一家』
登場人物の誰一人として協調性というものがないのはすごい。とくにムーミンママがひどい。

同じ時期に作者の伝記映画『トーベ』も観た。これはレズカップルがひたすらくっついたり擦れ違ったりする映画であった。

 

林望訳『謹訳 平家物語』1〜4
◎兵藤裕己『琵琶法師』
白洲正子謡曲平家物語
木下順二子午線の祀り
近松門左衛門「出世景清」(新編日本古典文学全集76・近松門左衛門集3)
★アニメ版平家物語を観て、これが全然おもしろくなかったので「こんなはずでは……」と思い原作に手を出した。しかし、原作も期待したほどには面白いと思えず、僕の中の「平家物語ブーム」は意外にすぐ去ってしまったのだった。なぜ面白いと感じなかったのかについても一応見解がまとまっており、これは気が向いたら別途書くことにする。

 

◎高橋政史『頭がいい人はなぜ方眼ノートを使うのか』
◎Marie『箇条書き手帳でうまくいくバレットジャーナル』
★ノートの書き方を学びたいと思い、Kindle Unlimitedに入っている2冊を読んでみたところ、正反対のことが書かれていたのが興味深かった。要するにノートを「1つのテーマについて考えをまとめるために書く」のか、「自分の行動やとりとめもない考え、体調を記録しておくために書く」のかという目的の違いにより、適したまとめ方も異なるということなのだろう。

 

◎モニカ・ルーッコネン『マイタイム』
★上記の2冊と同じ日にKindle Unlimitedで流し読み。家族と時間を共有しながらも自分の時間を持ちましょうねという、それだけの本なのだが、非常によくまとまっていて有益だった。北欧人は「QOLを上げる地力」みたいなものが高いのだろうと感じる。

 

◎間川清『1年後に夢をかなえる読書術』
松岡正剛『多読術』

◎石黒圭『「読む」技術』
★読書ハウツーは定期的に手をとってしまう。このほかにもKindle Unlimitedで流し読みした本は何冊かあるが、内容を覚えていないので良くなかったのだろう。いいと思ったのは前1〜2冊めで、前者は「実用書を読んでそれを実行に移そう、小説? 暇なやつが読め俺は知らん」という潔さが素晴らしかった。後者はそれとは真逆のスタンスで、教養としての読書というものをこの本くらいちゃんと語っている本は意外と少ないと思う。
『読む技術』は本を読んでいるときに頭の中で何が起こっているか知りたくて買ったのだが、その点では期待はずれだった。この手の話は、むしろ近代文学の研究者とか評論家の書いたもので面白いものがあるような気がする。

 

◎岡西政典『新種の発見』
★新種の生物を発見したことのある生物学者が、新種の発見、分類、記述というプロセスを解説している本。新種の生物というのは毎年めちゃくちゃたくさん発見されているのだが、既存の生物とはどこがどう違っているのか記述するのはとても大変だということがわかった。生き物系の話もたまに読みたくなる。

 

◎ヤンシィー・チュウ『彼岸の花嫁』
「冥婚」(死者との結婚)をテーマにした長編小説。中国的な、あまりに中国的な幽霊(死者)の描き方が面白い。それも、舞台が本土(と著者が呼んでいる)中国ではなく、イギリス占領下マレーシアの華人コミュニティであるというところもユニークで素晴らしい。昔、中国人の友人に勧められて観た「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」という映画を思い出す。主人公のマインドがガーリーすぎてついていけないところは多々あったが、同じ著者で面白そうなテーマの小説が出たらまたぜひ読んでみたい。

 

伊藤比呂美切腹考』
ジャパニーズ・ハラキリ・カルチャーの話だと思ってずっと積んでいたのだが、読んでみたら全然そうではなく、エッセイ集であった。