地方史のレッスン

自分の住んでいる自治体が『○○市史』という本を編纂・出版している。

ハードカバーの立派な造本なのだが一冊3,000円もしない。市役所で販売しているらしい。
近世編・近現代編・民俗編に分かれていて、このうちの近世編を買おうかどうか迷っている。
市のホームページで目次を見てみると、この辺りでいつから・どんな風に集落ができあがって、どのように発展していったかということが書かれているようだ。

なんだか『マインクラフト』みたいでわくわくするじゃないか。ゲーム脳特有の本末転倒ではあるが。
単純に自分の住んでいる土地の歴史を知りたいという興味もあるのだが、縁のある場所に限らずどこかの町の地方史を腰を据えて学んでみたいという気持ちを以前から抱いている。

そうすることで「土地に対する想像力」をやしなう練習をしたいのだ。
どういう階級の人がどれくらいの割合で居住していたのか。農民と役人の間はうまくいっていたのか、あるいは係争が絶えなかったのか。どんなものを生産していて、どういう経路でそれが流通していったのか。━━例えば、そういったことを詳しく知りたい。
時代小説を読んでいると、そういったディテールが豊かに描き込まれている作品はやはり面白い。それは単なる些末な知識の羅列ではない。むしろそういう風に土地に根づいた生活を細部まで描きこむことで、架空の登場人物のエモーションをありありと想像できるようになるのだろうと思う。
藤沢周平は、自分の故郷をモデルに「海坂藩」という架空の藩を創ってしまったし、横溝正史は「獄門島」をはじめ数々の呪われた土地の地形や歴史を見てきたかのように語った。
その万分の一でも、自分に土地に対する想像力があったならと思う。そういうわけで、地方史のレッスンをぜひはじめたい。