『仮面ライダーW』の悪の描き方はすごい

今年の楽しみといえば、読書をのぞけば、食後に妻と仮面ライダーを観ることであった。
『オーズ』を観て大いにのめり込み、続けて『W』を観始めた。それももう佳境にきている。
両作とも10年前に一度観ているが、そのときはどちらかというと『オーズ』のほうが好きだった。見直してみると、甲乙つけがたいが『W』のほうが面白いと感じる。
『W』は、悪役が人間臭く生々しいのがいい。園咲家という一族が悪の親玉なのだが、思想そのものが加害的な絶対悪といえるのは父親の竜兵衛だけだ。その手下として街の人々を傷つけている冴子、若菜という姉妹は、父親に巻き込まれ、父親に愛されるために罪を犯している。悪そのものというより、善の不在という風に見える。
世の中に充満している悪い奴というのは、たいていは冴子と若菜のようなものだ。親とか友人とか地元の先輩とか、そういう身近な因果に巻き込まれて善心を手放してしまう不順な悪というわけだ。だが稀に本当に悪い奴というのもいて、これは根本的に思想的に悪い純粋悪なのだ。
「正義の反対はもう一つの正義」と相対化してものを見ようとする人もいる。しかし、いやいや、もうどうしようもなく悪い奴というのも、やはりいるものだと僕は思う。
ありふれた不純な悪と、そのコアにある純粋な悪━━『W』はこの悪の二重構造がとてもよく描けていると思う。